アメリカと日本のロハスは微妙に異なる。
和田: まず概要的なところで・・・
ロハス (LOHAS)と言っても、まだ、よくわからない人たちが多いと思うんです。そこで、まず、ロハスについてざっと教えていただけたらと・・・
イデ: ロハスとは、LOHAS=Lifestyles Of Health And Sustainability. の頭文字をとった造語なんですが、健康と環境に配慮するライフスタイル、直訳するとそういうことです。 個人の健康と地球の環境をサステイナブル(持続可能)にすることを、同次元で個人のライフスタイルとして考えるというところが新しいんですね。それまでは、環境は環境、エコはエコ。それから、健康は健康という風にちょっと分かれていたのが・・・。
和田: そうですね。
イデ: ひとりの人間がどちらも配慮する。そういう生き方をしている人が結構増えてるよ、というのを明らかにしたのがロハスの基本だと思うんです。
  元々は、アメリカのポール・レイ博士の90年代の調査で、今までの政治的な右とか左ではなく、新しい発想を持ったちょっとカウンターカルチャー系の人、プラス、ニューエイジ的な考えを持ったスピリチュアルを理解しつつ、地球環境にも配慮したいと思っている人、そういう価値観を持った人たちが結構いることがわかって。こういう人たちをカルチュラル・クリエイティブス(Cultural Creatives)という名前でカテゴライズしたんです。そして、元々少数派だと思われていたカルチュラル・クリエイティブスが、調べてみると20数%もいた。
和田: ええ。
イデ: それらがどういう人達かというと、以前ヒッピーだった人達が多い・・・という調査結果があったわけなんです。その調査に、ガイアムのCEOが注目して、こういう人たちにビジネス的にどう受け入れられるのか、ということをマーケティング的にも考えようと、ロハスという言葉をポールと一緒に作ったのね。50〜100ぐらいの候補の中から、そのロハスという言葉が生み出されたと聞いています。
和田: 日本で広がっているロハスとアメリカのロハスというのは違うような気がするんですね。
イデ: 微妙に違いますね。そもそもLOHASと言う言葉は、消費者向けのキーワードじゃないんですよ。LOHASフォーラムっていうのが、毎年1回春に行われていて、今年は11回目なのでLOHAS11(ロハスイレブン)。去年のLOHAS10(ロハステン)は、日本人が50人以上参加しました。
ロハスプロデューサーで「日本をロハスに変える30の方法」の著者、大和田順子さんが6回目に行って、それが最初の日本人。僕は、その次の年7回目に行きました。
和田: ええ。
イデ: その時も日本人3人だけだったんです。僕は、イースクエアの社長のピーター・ピーダーセンからロハスという言葉を初めて聞いて、当時、僕は癒し系コンテンツの会社をやっていたのですが、ピンと来るものがあって7回目に行きました。実は、僕の会社でスポンサーしたんですよ。正確には、僕のパートナーのミュージシャンの喜多郎さんのレコード会社と三日間あるうちの一晩をスポンサーしてね。喜多郎さんの音楽とかをアピールしたりして。それは、コロラド州のボールダーでやったんですが・・・。それにしても、その時でせいぜい300人〜400人、今でも600人位の業界関係者が集まるイベントです。
和田: ええ。
イデ: ですから、4つに分かれた層のうちの1つがロハス層だと定義され、じゃあそういう人たちに対して、どうビジネスしたらいいんだろう?マーケティングはどうだろう?広告はどうだろう?というのを話し合うために、1年に1回集まるのがロハスの始まりだったわけなんですね。
和田: へえ・・・
イデ: 帰国後、僕の周囲にもロハスについて共感を持ち語る人が増え、僕の会社でも何かやろうかなあって思ってました。その時にヨガブームが一緒になって入ってきたようなところがあって。
和田: ロハスで広まって、ヨガが来たというよりも同時なんですね。
イデ: 僕はヨガも自分でやっていたから、これは日本でいけるだろうと思っていたんだけど、ほとんどみんなピンときていなかった。それまで日本は、オウム事件があったから、ヨガやっているって言っていたら、みんなひいてたしね・・・
 その後、マドンナがやっているとか、ジェニファー・ロペスがやってるので、ヨガがカッコいいっていう風潮が入ってきた。
和田: よく女性誌で、ハリウッドのセレブ、女優たちがヨガマットを持って歩いている写真がでてたのが、今から5年ぐらい前とかねえ。
イデ: アメリカでヨガが流行ったのは、おそらく10年ぐらい前。最初は、ニューエイジショップにしかおいてなかったガイアム社のヨガビデオが、ある時コストコとか、タワーレコードなどいろんな所で売られるようになって、今では、ウォールマートでも売ってるぐらい。だから、ブームになってるんだなあっていうのは、すごく感じてたんですね。
 ロハスって言葉がブレークしたのは、ヨガが入ってきた時期よりも、ちょっと後かもしれないけど・・・
 日本がなぜ普及したかって言うと、メディア主導でした。直接的には、ソトコトがスローフードからロハスに軸足を切り替えた。それが2004年の11月ぐらいかな?!
和田: へえ・・・
イデ: その辺からロハスってなんだろう?ってみんなが調べ始めて理解者が増えてきたのが、その辺り・・・
和田: 例えば雑誌でソトコトにしても、初期の頃から知っているんですけど、どっちかっていうと環境NGOとかね、そういう空気感があったんですけど・・・
イデ: ソトコトは、僕もたまたまなんですけど、ソトコト創刊号をアメリカから帰るときに成田空港で見て、買って帰って、これいいなあと思ってたのね。その時、エコピープルのためのおしゃれなマガジンみたいな感じで・・・
和田: ええ。ファッション雑誌の扱いでしたよねえ・・・
イデ: だから、それも出会いだと思って。日本とアメリカのロハスって、そういう意味では、全然違う展開になっていて、日本では、最新の調査では7割の人が聞いたことがあって、その4割が意味を知っているってキーワードになってます。
和田: ポール・レイ博士の資料をみると、アメリカでは、5人に1人がカルチュラル・クリエイティブスと言われているますよね。日本は3人に1人ぐらいって言うのが、結局、ロハスと言うよりも、もともと日本にそういう文化性があったんですか?それに近い・・・
イデ: でも、イースクエアでやった調査っていうのは、アメリカでやったとのと全く一緒の質問なんで、日本もアメリカも、ロハス層がそれぐらいいるということだと思います。2005年でアメリカが26%、日本で29%がロハス層でした。アメリカよりちょっと多かった。日本はただ、ロハスに近い健康志向な層も多いので、結構な人が健康志向ではあるというのが実感です。
和田: なるほど。それだけ広がったっていうことですよね?
イデ: 実は、去年のロハス10で、ロハス層の定義がちょっと変わったんですね。それまでは4つだった層を分類し直して5つに分けて再定義した。全体のロハス層は17%、そのうち、ロハスリーダー層が9%、ロハスフォロワー(追随)層が8%でした。自然なものを嗜好するナチュラリティーズが21%。これはロハスではありませんが・・・。
和田: ヨガにしても、ロハスにしてもそうなのかな。ライフスタイル以前に、ダイエットとというところがアメリカは強いような気がします。
 日本の場合は、ファッショナブルな価値観、ライフスタイルといようなアメリカとは違う感じがしますね。
イデ: 最初はダイエットにも効くし、何となくおしゃれっていうのもあったと思うし、スピリチュアルなものが90年代に広まり始めてたから・・・そういう流れを受けてたと思う。それで、日本と違うところは、男も女もやっているとこかな。
和田: やはり、日本は女性ですか?
僕もヨガの教室に行くと、男は僕ともう1人いるかいないかですから・・・。
イデ: 日本のロハスは、女性が中心なのは実感するけど、アメリカのロハスっていうのは男女は問わない。ベビーブーマーが、2011年に引退し始めるんだけど、そういう人たちは、やたら健康志向です。
和田: へえ。
イデ: そういう人たちは、昔ヒッピーが多かったから東洋思想にも染まっていた。鍼とかホメオパシーとか、陰陽とかね。そういうのを自然に受け入れて、結果として代替医療っていうものが、ものすごい市場に育っていって・・・
和田: なるほどねえ・・・・
イデ: それが、ロハスの一分野(Alternative Healthcare:代替医療)
になってます。
和田: ようするに、そういうことを理解する人がベビーブーマーに多いから・・・
イデ: そうそう。健康志向のベビーブーマーが歳をとって、やっぱり西洋医学の限界を感じてたのかもしれない。アメリカでは、健康保険が日本みたいにみんなが入っている世界ではないので、おちおち病気になってはいられない。だから、健康管理は自分でやる・・・だから、朝早く起きてジョギングする。それから、汗流して・・・。ずっと前からタバコを吸わない、それから体重の管理をするっていうのは出世の条件とか言われてましたよね。もう極めて普通のことなんです。その中に、ヨガや瞑想や代替医療が入っていて、というのが自然なのかな。
和田: ロハスっていうのは、ボールダーからスタートしたみたいなところがあるんですけど。内陸部ですよねえ。イメージ的には、やっぱりウェストコートとイーストコーストが中心でね、特に、ロスとかNYって感じがしたんですけど。現実的にはそうでもないんですか?
イデ: ロハスがボールダー発って言うのはガイアムがボールダーにあるからなんです。ホールフーズとかも・・・ボールダーは、もともとニューエイジのメッカなんですね。
和田: ボールダー自体が・・・
イデ: ボルダーにはニューエイジショップも数多くあります。そうそう、喜多郎さんもボルダー在住だったんですよ。
和田: へえ・・・
イデ: 僕が行った第7回のLOHAS コンファレンス、その頃は、ボールダーでやっていたんだけど、今とは微妙に違って、ローカルな香りのする、とても温かい雰囲気のフォーラムだった。ホテルを借り切ってやるんだけど。特に、ボールダーでやっていたから、ニューエイジのグルみたいな人がいるかと思うと、背広着た関係者もいて、爽やかなパタゴニアの社長がうろうろしていたりとかね。
 非常に面白い人種。もっと遡るとカリフォルニア、サンフランシスコのバークレーで、健康ビジネスに関わっている人とベンチャーキャピタリストが集まって、投資家とマッチングしようみたいなことで始まったフェアーというかカンファレンスが原点です。元々その時から6回目までは、まだロハスって言葉は使われていませんでした。そんな流れがあって、やっぱりカウンターカルチャーの香りを持ちつつ、健康志向、そして地球環境重視、それがロハスなんですよね。
だから、本質的にはスピリチュアルだし、自己開発が5つのジャンルのひとつとして入っているのがロハスの特徴ですね。
和田: なるほど。
イデ: 今は逆に、今年なんか特に、日本でもスピリチュアルがだいぶん市民権を得てきたじゃないですか。去年も、癒しフェアにも若い女性がたくさん来るようになって、そろそろアメリカ起源の本質的なロハスを広めていく時期に入ってもいいじゃないかなって思ってます。
アメリカではロハスは一般にはほとんど知られていない。
イデ: 僕は、14年アメリカにいたのでよくわかるんですね。本にも書きましたけど・・・ヤッピーとかがもてはやされたのが80年代中盤ぐらいですよね。
和田: ですね。
イデ: だから、トレーダーで年収1億稼いで、大きな家に住んで、2、3台車があって、ネームバリューがあるみたいなのが成功イメージみたいな。映画もあったじゃないですか。ウォール街・・・あれがまさしく80年代の成功のイメージだったみたいな。それって、今のヒルズ族みたいなもんじゃないですか。
和田: あっそうか・・・
イデ: その後、アメリカの景気がリセッションになった。 
僕が行った時の87年は景気が悪かった。日本がバブルで景気いい時、アメリカは建築途中の休んでいるところが結構あったんですね。みんなリストラされて、ヤッピーの人たちも大きい家に住んでみたけど、何か幸せじゃあないなあみたいな振り返りもあって・・・
  90年代前半ぐらいに、ジェームズ・レッドフィールドの「聖なる予言」セレスティン・プロフィシーってのが大ベストセラーになって、2年間ぐらいベスト10に入っていたような、それぐらい売れた・・・
それでシンプルライフ志向というかね、「聖なる予言」というスピリチュアルなものと、シンプリィ・ユア・ライフっていう本があるんだけど、その本がベストセラーになって、なおかつミッドエイジクライシスっていう言葉が・・・
和田: はい、僕も来てます・・・笑。
イデ: だからみんな一緒に「金、金、金」で走ってきて、30代後半、40代でふと立ち止まると「俺の人生、何だったんだろう・・・」みたいなアメリカ人が、その頃多かったんですね。
 それで、人生の棚卸しをするとか、シンプルライフで物を持たないほうがいいんじゃないかとか、自然に触れた方がいいんじゃないかとか、収入と自分の幸せのバランスをとって、一回見直してみましょう。だから、いらない荷物は捨てて、これからの人生をシンプルに生きましょう!みたいな気づきが、90年代前半からだんだん増えてきた・・・
 その中でヨガとか瞑想もそんなライフスタイルに合うということで。90年代は精神世界もシンプルライフ思想も、広く受け入れらた時代でした。まだその頃には、ロハスって言う言葉はなかったけど、その流れがだんだん大きくなって、今度は、オーガニックフードとかオーガニックコットンとか、いろんなロハス的なものがどんどん受け入れられる一方、カリフォルニアの自然保護NPOのシエラクラブとか、環境保護のグリーンピースとかそういうのを支援する人も、僕の周りに、僕自身も含めていっぱいいたし・・・
 だから、健康志向で、運動やスピリチュアルなことを取り入れたシンプル志向のライフスタイルをおくりながら、SRIとか寄付とかいろいろ可能性に意識を向ける、まさしくロハス的な人たちが僕の周りにもいっぱいいた。そういう流れでだんだん増えてきたんですね。
和田: パタゴニアは、ロハス企業の代表のように言われますけど、僕が17、8年前、まだ、僕の住んでいるところでは、国内通販で買えなかった。たまたま僕の知り合いがアメリカのカタログを持ってて、買ったことがあるんですね。あの頃って、あまりスタイルは変わらないけどアウトドア企業でした。
イデ: 創業者のイヴォン・シュイナードはビジョナリーだし、ロハスっていう言葉がある前から、世界で初めて、オーガニックコットン製品しか使わないって宣言したのが10年以上前からなんですよ。
だから、そういう風に感じる人はずっとパタゴニアを熱狂的に支持して・・・というな流れかな。イヴォン・シュイナードも、ロハスなんて流行だから自分たちには関係ない、というようなことを言ってた記事もあるよね。
和田: 面白いですね。昔、今からちょうど12、3年前もうちょっと前かな?
アウトドアブームがあって、さっきの食の健康とか、いろんなものが単発でブームになっていて、今はそういのが一回落ち着いて一つのところに集まったみたいな感じがしますね。
イデ: そうです。聖なる予言も、アメリカでヒットしてから、日本でもサンマーク出版が出して、売れ始めてたし、あとTM瞑想法なんかも、精神世界的なものが注目され始めていましたよね。だけど、オウム事件で全てが「ガーン」っとなってしまい、精神世界なんてとんでもないみたいな。
日本はバブルだけじゃなくって精神世界も「失われた10年」だったかも・・・
和田: 何かねえ。物質思考の若い人たちが、ミッドエイジクライシスとかって味わうときに、あと10年ぐらい経つと、また大きな時代の変化があるような気がしますねえ。
イデ: アメリカでは、90年代はワークスタイルもすごく変わりました。リストラもされて、インターネットが普及して。だから、SOHOがどんどん増えて、雇われていない人がものすごく多い。プロジェクトチームで仕事するようになって、自分が仕事がやりやすいように時間管理をしたり、だからライフスタイルの幅が広がったんですね。インターネットの力もすごい大きいし。だから、シリコンバレーのプログラマーで、実力のある人は一匹狼が多いんですよ。
和田: ええ。
イデ: プロジェクトごとに手伝って、収入的にも恵まれている。でも週末は、自転車に乗って山に登るみたいな自然派で、服には無頓着。そんなのがきわめて普通でした。僕もそれは実践してたので。だから、そういうライフスタイルをあらわす言葉がロハス。ロハス先にありきではない。
和田: なるほど・・・
イデ: さっき言ったように、消費者の人はロハスって全然知らないじゃないですか。オーガニックっていう言葉はまあ広まっているし、ビジネスも盛んだけど、ロハスという言葉自体は全然広まっていない。
和田: ロハスってわかるけれども、全体の空気感としてわかっていて・・・
ロハスがビジネスと絡むとか、多くの人が実践的な暮らしの中で、ロハスライフを取り入れているということがピンとこないですよね・・・
イデ: カリフォルニアに住んでいる人の中でそういう意識が高い人は20%どころじゃないかもね。
和田: エリアが固まってるから(笑)
イデ: ある意味新しい成功パターンなんですねえ。
だから、仕事だけじゃない、健康にも気を遣って、ちゃんと稼いでハッピーに生きようよ!みたいな価値観?!
和田: アメリカでは、ロハスって普通に言うと、もうかなり普通に・・・
イデ: いや、言葉としては一般の人は誰も知らないと思う。
和田: 逆にアメリカの方が知らないんですか!?
イデ: うん。全然! だって、業界のマーケティング用語で、直接消費者にアピールする言葉ではなかった・・・ロハスジャーナルっていう雑誌は、業界紙ですからねえ。
  面白いのが、去年日本から50人行って、ジャパンブースができて、日本でこんなに盛り上がっているって、ピーター・ピーダーセンが発表して、日本で何が起こっているんだろう? みたいな感じでした。
 でも、もともとアメリカでも、そういうふうにロハスを普及したいと思ってた人もいるので、日本の方が先に普及した・・・
和田: 何か僕は、昔からそういった興味、関心が高かったんで、だから自然にロハスは当たり前なんですが・・・
 でも、最近、ロハスを知らない人に出会うことが少なくなって、これは僕の生き方がそういう選択をしているんですけど。だから本当のマーケットっていうのは、見えきってってないんですねえ。やはり、ロハスに関わるビジネスの人たちも、自分たちの周りにはロハスのことをわかる人ばかりだから、気がついたらその末端っていうか、端っこの方を広げる部分としては、もうわかる人だけわかればいいやっていうことになっちゃったりするとは思うんですけど・・・
イデ: 日本は、メディア主導でロハスがこんなに広まったんで、ある意味で流行言葉みたいに・・・僕が、2001年に日本に帰ってきた時に、「癒し系」っていう言葉が流行ってたのと同じように...その後、スローフード、その次がロハスだって捉えてる人も多いかも。要は、日本はキーワードで時代を象徴するようなところもあるじゃないですか。でもロハスに限っていうと、商標問題があったことで、消費されつくされずに、中途半端になったことが、逆に良かったのかもしれないですね。インターネットが普及しているので、検索して、調べて、それぞれがインターネットから発信したりして、意外とロハスの本質を知っている人が、まあまあいるのかなって思うんですね。
和田: 僕の地元でも、ロハスの家とかね作ったりしている住宅会社があるけど、いやぁ何がロハスなんだろうって思ってしまうことが多いですよねえ。
イデ: なので、個人レベルで、本を読んでちゃんと知っている人は、なんちゃってロハスな便乗商品を見てもね、逆効果。そのぐらい知っている人も増えていることは、いいことだと思うんですよね。
 この商品のどこがロハスなんだろう、って本当にロハスを理解している人は知ろうとする。だから、そこはビジネスをやっている人は気をつけなくちゃいけなくって、安易にロハスって言っちゃうと、本当に逆効果になる時代になっているんで・・・まず便乗と思われる。それから、ロハスじゃないのにロハスというとか・・・
和田: 要は、生活者の方が、情報武装しているから・・・
イデ: そう、ロハスな人は、知りたがり、伝えたがり、試したがり。そういう人が多いんだと認識したという意味では、いい流れなんだろうなあと僕も思います。ロハスビジネスをするにしても、安易にロハス何とかって言うのは、考えた方がいいよって・・・
今でいうロハスな生活が
普通に西海岸のライフスタイルだった。
和田: イデさんは、元々音楽の世界にいました。その辺のお話をちょっと軽く聞かしてくれませんか?
イデ: プロとして音楽をやっていたのは20代だったから、アメリカに行く前だったんですね。
29歳の時に行って、その後は、プログラマーとして音楽ソフトとかを作るようになって、あんまり音楽を直接にはやっていなかった。14年住んでて、ジムに通ったりジョギングしたり、いわゆる今でいうロハスな生活が普通に西海岸のライフスタイルだったので、そこでヨガにも出会って、エコ志向でもあったんです。例えば、渋滞が激しいってこともあったんだけど、電車と自転車でオフィスに行ってたりしてた。あとシエラクラブにも入って。そういう暮らしをしてたんですが、ITベンチャーの流れにものって、結局日本に帰ってきてビジネスにかかわるようになった。
  2002年に、ボールダーのロハス7に参加して、非常に居心地が良かったっていうのが、そのフォーラムにいる人たちはちょっと違ってた。自己開発をしている人。そこにいる人たちは、話していてちゃんと聞くしとてもフレンドリー。仕事の話をした時も、WIN-WINでお互い考えましょう。アメリカ人って人の話をきかない人が多いけど、そういう意味で、違う人種に出会った感じ。
和田: なるほど・・・(笑)
イデ: そんなことでロハスがしっくりきたんですよね。フォーラムは、朝7時からヨガクラスで始まって、今もそうなんだけど・・・その時にヨガを教えてくれたのが、ガイアムのビデオでベストセラーになっているロドニー・イー・・・彼と僕が確か同じ歳で、とてもいいやつだなあと思っていて・・・
今ではカリスマ的ヨガインストラクターのロドニー・イー
和田: へえ。
イデ: だから、僕も帰ってからロドニーを立てて、ヨガビジネスやろうぜ!みたいに盛り上がったんですが・・・でも、周りの人たちは何かもうひとつ?
 日本じゃこんな東洋人ダメですとか言う人がいたりとか・・・(笑)
ただ僕がこうやって話をするとみんな共感してくれて・・・
和田: フォーラムは、今はどこでやってるんですか?
イデ: この3年ほどはロサンゼルスで開催されています。そんなことで、ロハスは、僕のライフスタイルや考え方にもすごく近いし、もし僕がロハスの調査でアンケート調査受けたら、ぴったり当てはまるなあと思った。僕の持っている感覚って、おそらくカリフォルニアに住んでいるごく普通の健康で、環境意識の高い人なんだと思う。
 僕はね、ミュージシャンでもあるし、ビジネスマンでもあるけど、解説者とか評論家やジャーナリストではないじゃないですか・・・
だから、別にロハスを広める活動をしようとはあんまり思っていなかったんです。だけど、自分のライフスタイルを伝える本はたまたま書いてた。ロハスということではなく。ちょうどその頃、2005年6月に、ロハスがヒット商品ランキングの西の大関に選ばれて、ロハスがこんなに広まってきたんだったらということで、ロハスについての解説ページを入れて、8月に僕の本がでました。結局、一番最初に出た単行本になったんだけど。そして、大和田さんたちの本が2006年1月に出て、ピーターの本も出て。
和田: まあ、広がり方が誤解されるようなところもあるんですが、それはもうそれでしょうがないと思うんですよね。だけど、誰かが実践的なというか、本質的なところをきちんと伝える人がいないと・・・
イデ: そうですねえ。
ある意味いろんなシンクロニシティーが重なって本が出せたし・・・
今思えば役割みたいな。
ロハス10で、アメリカで人気のビリー・ブランクスさんと
ビリーさんのWebサイト “Taebo”
お金を使うことが自分の投票権。問題はお金の使い方。
和田: イデさんが、ロハスを伝えていこうという思いは、アメリカで生活経験と今という時代背景、そして、生き方、考え方から自然なカタチででてきたと言うことですよね。
イデ: 本を出したり、セミナーを企画したりして、いろんな出会いがありました。
本は実践者として書いたもので、ロハス層の人たちに向かって、ロハスとはこういうことで、あなたのライフスタイルにロハスを取り入れてみませんか?という提案をしました。その中で感じたのは、日本のロハスは、やっぱり女性が中心、そういう意味では意識の高い女性が増えてるなって実感させられますね。男性は、頭ではわかってんだけど、忙しくてなかなか実践できないみたいな人が多い。

 女優の高樹沙耶さんとも親しくさせて頂き、対談も何度かしましたが、彼女は「私は、もうやりたいことをやっていればいいの。海にもぐって、エコハウス建てて。女優をやりながら、そうやってその活動をすることによって、みんながやってみたいと思ってくれて、結果としてロハスの人たちが増えればいい」と。僕が「ロハスは、やっぱり女性中心ですよね?」っていうと「いいのよ!女が変われば男も変わるから・・・」って(笑)
和田: 男性には、つらいとこありますよね(笑)
イデ: バブルの頃、女性は、ブランド品のバックがいいとか、フランス料理連れてってとか、そう言ってたわけでしょ。でも、自分の価値観が大きく変わって、もっとおいしい空気が吸いたいとか、玄米の無農薬野菜が食べたいとか彼氏に言うと、彼氏は一生懸命探すでしょうと・・・。だから、女が変われば男も変わる・・・
 今うちの奥さんがセミナープロデュースとか始めています。女性が何を望んでいるかは、女性の方がよく分かる・・・(笑)今の僕はロハスワイフの応援団かな!
和田: へえ。
イデ: 僕自身は、ビジネスやロハスな事業開発に関わって行きたいと思っています。ロハス的なビジネスがもっと日本でも立ち上がって、ロハスがビジネスチャンスであるという認識を広めたいと思ってます。
  それには起業家、とくに若い人たちが、ロハスビジネスを目指すことも大事。成功するひとつの道として。ここ数年、ITで成功するっていうのが、成功パターンだったと思うんですけど、それと同じように、ロハスっていう分野で、いろんなビジネスがあるってみんな気付いてもらい、その起業家にベンチャーキャピタリストとか投資家がお金を出すというような。まさに5、6年前にシリコンバレーで起こったことを、今日本でも起こしたいなと思っています。
 アメリカのボールダーでは、すでに成功したロハスビジネスがかなり立ち上がっていて、昨年のロハス10のキーノートスピーチもAOLの創業者のスティーブ・ケースだったんです。彼の投資会社が、先ほどのガイアムや、カーシェアリングの会社、メディカルの会社、リゾートの会社などに投資をしている。彼はその分野にしか投資をしない・・・なぜならこれからものすごく伸びる分野であり、彼自身もロハス志向になったから。それはとても象徴的だと思います。
和田: はい。
イデ: お金だけじゃないよねと、みんな何か思い始めて・・・
何が大事なんだって答えがもう一つ見つからない中で、みんな生きてる。
それがロハス的な価値観っていいよねとか、今回公開された映画、「不都合な真実」を観て何とかしないといけないと思って、じゃあ自分で出来ることで事業を始めようと思うような人がいたらいいじゃない。広まれば広まる程、二酸化炭素削減にも貢献するようなビジネス。それを応援するベンチャーキャピタリストも、そこに投資することがビジネスチャンスだと思って、投資する流れが出来て。数年後にオーガニックコットンシャツを着たね、ヨガやっているようなCEOに率いられたみんながハッピーな会社がどんどん上場したり。
和田: はい。
イデ: そういう流れを作りたいなって思っていて。そのために今度、ロハスビジネスアライアンス(LBA)っていう組織を作ろうとしています。だから、ロハス×ビジネス×お金の分野で活動する。
和田: 実は、僕はトヨタに質問したことがあるんですね。質問したところが悪かったんですけど、広報室とかに聞けばよかったんでしょうが、お客様相談室に聞いちゃったんですね。プリウスはいい車だと思うんですけど、専門家に言わせると電池の廃棄の問題とかいろんな事が・・・環境問題とかも100%OKではないけれど、こと二酸化炭素に関しては結構メッセージ性の高いもので、そう言う意味でもトヨタがプリウスをPRしている。でも実際には中国とかね、世界に拡大していくマーケットで、世界でもGMを抜いてナンバーワンになって・・・・
 その勢いに比べれば、プリウスがいくら売れてるとか、いくら生産していると言っても、市場拡大の方が圧倒的に大きい。それが僕は気にかかっていて、トヨタはナンバーワンの会社ではなくて、もう完全にロハス企業というかエコ企業になるんだと、何でそういう宣言が出来ないのかなあと・・・でも、それを言っているとね、ちょっと活動家みたいなカタチになってしまって、僕はそういう意図はないのだけど。トヨタはどういう選択をしていくのかなと、もう少し情報公開をして欲しいなって思うのは、トヨタがやれば、各界全部やらなくてはいけないので、そういったアクション、選択はあると思うんですけどね?
ただ、それはやっぱり、企業としての維持しなければいけないものもあるわけだし、なかなか難しいのかと思うんですね。
イデ: 今アメリカは、京都議定書を批准していないですよね。
和田: ええ。
イデ: でも、州レベルでは、13州ぐらいが京都議定書より厳しいスタンダードをつくるとか、カリフォルニアでも、シュワルツ・ツェネガーがエコ知事になって、いま、かなり厳しい排ガス規正法を通したんです。
 だけど、今の話で言うと、トヨタも含めて自動車メーカーがそんなカリフォルニアを訴えているんですよ。プリウスを作ってるトヨタ自身も、その厳しいスタンダードに反対しているわけなんですね。だから先進的な活動家は、ダブルスタンダードだってトヨタを批判したりしている。トヨタさんどうなんですか?って。
 これは、トヨタ自身が考えていかなきゃいけないことだし、プリウスがビジネスチャンスを生んだけど、大きなピックアップトラックも作っている現実もあるわけじゃないですか。少なくとも、寄ってたかってカリフォルニアを訴えなくても、最終的にはお客様がNOと言えば、やっぱりトヨタも考えると思うんですよね。
和田: 結局そこですね。
イデ: そこだと思う。僕は環境アクティビストとロハスの層の違いは、お金を使うことが自分の投票権だということを認識することなのかなと思っていて・・・
和田: あっ!いい言葉ですね。
イデ: そのお金の使い方が、モノを買うという使い方と、寄付じゃなくて投資をするSRI的な考え方もある。エコファンドとか市民風車ファンドとか。
和田: 社会的責任投資っていうことですね。
イデ: そうですね。投資信託も、その方が儲かるから投資をする、ファンドもちゃんと利回りが取れるっていうことの理解して選択をすることが大事。
 楽観的かもしれませんが、みんなのお金の使い方や投資の流れが変わって、それが集まれば社会を動かせるとか、モノを買うという行為を通じてちゃんとした企業を応援すること、ロハスだと思っています。
和田: 先ほどから価値観の話で、お金を儲けて拡大思考で成長していくってところに対して、やっと少し疑問が生まれて「じゃあこれからどうしたらいいの?」ってところがあると思うんですよね。
 この流れが大きくなるためには、さっきのLBA=ロハスビジネスアライアンス、この活動が中小企業とか一般の人たちにも広まれば、大企業と違って動きが早いですもんね。
イデ: もう一つ思ったのがね、日本の地方には結構素晴らしいものをつくってるところがあるんですよ。日本は環境先進国だし、ソーラーパネルを使ってちゃんと製品作りをやっているところも多い。だけど商品はいいんだけど、パッケージがちょっと...自然食品店なら置いてもいいけど、青山に置いたらちょっとこれは売れないだろうというのも実際多い。
和田: ええ。
イデ: やっぱりロハス層にアピールするには、パッケージをおしゃれにした方がいいとか、そういうブランドづくりとか、マーケティング的な発想がいるじゃないですか・・・
和田: そうですね。
イデ: そういうことをみんなで勉強していったらいいのかなとか、場合によったら共通ブランドとか・・・
和田: WiLLみたいな?
イデ: そういうので、みんなでガイドライン作ってブランド作るとかも、大手がやるんじゃなくて、そういうレベルの人が、力を合わせてやるのがLBAとかでできたらいいなと思っています。
和田: そうですね。ソトコトが貢献した面って、ロハスをファッショナブルな感じで伝えていること。 僕は元々デザイナーなんで、デザインに関して若いときに思想があって、デザイナーは神の手先だと思ってたんですね。つまりデザイナーが意識レベルを下げて気を緩めてしまうと、そこから酷いものが出てくるわけなんです。それは、神の手先になっている以上そこを研ぎ澄ませなければいけないんだっていうことをね。
イデ: なるほど!
和田: ちょっと、それはアバンギャルドな考え方ですけど・・・
イデ: (笑)
和田: でもやっぱりクリエイターの人たち、生産する全ての人たちですけどね。
それは責任もって、そういうところを意識して・・・この前も友人と「エレガンス」っていう話をしてたんですけど、エレガンスは美の一番の基本形とされているんですね。
 そのエレガンスっていう部分が、もう少しこういう世界に入ってくると、こんなのは青山じゃ売れないよねっていう商品はなくなってくる(笑)。結果、やはり地方に行ってもウケると思うんですよね、当然ね。
イデ: そうですね。なので、企業として洗練されると思うんですよ、結局。カッコいいモノを作っただけじゃなくて、ソーラーパネルを導入して、これからは二酸化炭素をオフセットして、とやっているんだったら、それもちゃんと伝えていくことが大事。CSRちゃんとやっていますとか、こういうことを考えて、こんなものを作りましたという事をストーリーとしてもっと伝えていく・・・
 ロハスを追求していくことは、ビジョン中心になることだと思う。ロハス何とかっていう商品を安易に作る、流行ってるから作るのと、きっかけは何であれやらないといけない使命感?!でビジョンが出来てその原則にすべてが従って、それで出来た商品って自ずと迫力も違うし・・・
和田: そうですね!
イデ: うん。その思いを伝えていくためには、まずビジョンがぶれない企業になる。日本ってビジョナリーって少ないじゃないですか、イヴォン・シュイナードみたいな人ってあんまりいない。でもやっぱり、そういうビジョンを持った経営者が増えていくことが大事だと思いますね・・・
パラダイムを変えるキーワードは「分かち合い」。
和田: ところで、NPOローハスクラブでは、ロハスのコーディネイターの認定をやられていますけど、そんなカタチにでも、もっとロハスっていう本質を伝えていける人たちが育っていくっていうこともひとつでしょうね・・・
イデ: ありますね・・・確かにね。
和田: ビジネス面に関しての展開の部分で、ロハスビジネスアライアンスなんかも、人や企業を育てていくことは大事なことなのかもしれませんよね・・・
イデ: そうですね。去年のロハス10で、ポール・レイさんとかが言ってたのは、オーセンティシティっていう言葉なんですね・・・日本語に訳すのは難しいけど、「本物志向」。
ロハス7でポール・レイさんと

最近は、大和田さんも同じく共感されてオーセンティックロハスについて語っておられますが、アメリカではロハス的企業がそれなりのサイズになって、大手にどんどん買収されているっていうのが、世界的な流れなんです。
  例えば、ボディーショップはロレアルに、トムズメインはコルゲートに買収されたし、M&Aがどんどん起こっていって、そうすると創業者が一生懸命やってきて、その思いなりビジョンが、買収された後でもちゃんと生きていけるのかどうかって考えていないといけない。
 ホールフーズはワイルドオーツを買ったしね。ロハス業界の中でもM&Aが起こっているのがアメリカです。でも、日本はまだそこまでのロハスビジネスの盛り上がりはこれから、その以前の段階でこの分野に資金が回ることが必要だと思うけど。
和田: まあ、あんまり危惧することではないんでしょうけど、やっぱりどの世界にも何か新しい流れの中には急進派がいて、例えば、競争のエネルギーを持った人もいると思うんですが、やっぱりロハスの中心は、コ・クリエイティブ(共同創造)っていうところでさっきのM&Aに買収されたとしても、エッセンスが少しでも残って、より拡大する方が前進かな?と思うんですよね。
イデ: そういう意味では、消費者もビジネスにしても、ロハスを流行と捕らえるんじゃなくて、メガトレンドとして捕らえて、その価値観の部分を学んでいって欲しいというか、知ってほしいですね。
和田: そうですね。
イデ: その大元の価値観まで行き着くとね・・・不都合な真実でも明らかになっているけど、やりたい放題の資本主義はもう地球が持たないのははっきりしているわけじゃないですか。
 それこそ、アメリカ人と同じ暮らしを、みんながしようと思うと地球が5個いるし、日本人と同じだって4個いるし、中国人が日本人と同じようにお肉を食べ始めたら地球をどっかからもう1個持って来ないといけないという・・・ 
 競争の先にある資本主義を、そのままみんなが追求して、右方上がりの成長っていうことを求めていくととにかく成り立たないわけなんです。じゃあどうすればいいんだろう?っていった時に、例えば、結局は、資源でキャップをはめるしかないんですよ。
和田: ええ。
イデ: そのキャップが、今は二酸化炭素という合意がに成りつつあるんですね。
だから二酸化炭素を排出する範囲でしか、ビジネスが出来ない世の中に、もうこれからなってくる。考えてみると、お金って、昔は金本位制だったんで、基本的には金を持っている分だけしか政府はお金を発行できなかった。それをアメリカが「止めた!」って言ってどんどん刷るようになって、そのアメリカが刷るものを、世界も日本も喜んで買っていったという、実体経済からバーチャルマネーの世界にいったのが究極のところまで来ているじゃないですか・・・
和田: そうですねえ・・・
イデ: でも、お金はお金だから、その投資先がリアルビジネスだとすると、みんなが資源の奪い合いをしているのが今。このまま行ったら地球5個の世界はありえないので、どっかでバランス取ることになるんじゃないですかね。
 キャップはめて、二酸化炭素本位制になる近未来のビジョンは何となく描き始めていて。企業にとっても二酸化炭素の排出を削減できればビジネスチャンスだし、削減できなかったところは何処からか買って来ないといけないので、コストになるしっていう認識は広まり始めている。イギリスなんかではもうそのスキームは働き始めていて、排出権市場もあり、カーボンファンドも1千億円を超えてるような流れが出来ています。 
 日本はまだね、排出権市場もないし、経団連も反対している。でも、二酸化炭素本位制の下での資本主義みたいな世界は、10年後には普通になっていると思うし、そうなっていなければ地球が破綻する。だから、資源のコストっていうのは、お金の中に組み込んで、なおかつ資源の範囲でビジネスをやる・・・だから、成功していく価値観をその中で変えていかなきゃいけないよね。
 本当は、みんながみんな成長して競争っていうパラダイムにあるうちは、ちょっと悲観的部分もあるのかなと思う・・・
和田: そうですねえ・・・
イデ: じゃあパラダイムをどう変えるかという話になると、僕は一言でいうと「分かち合い」だと思う。要は資源がもう無いということを知ることで、個人レベルでも企業レベルでも「競争」というパラダイムから「共存」というパラダイムに変わっていくしかない。その中で、地球環境を含めてウィン・ウィンになってくような発想していかないといけないかなあと思うし・・・
相田みつをさんっているじゃない。
和田: はい。
イデ: 「うばい合えば足らぬ。分け合えばあまる」っていう言葉があって、まさしくその世界観だと思うんです。今は奪い合っているから、これからおそらく水もあらゆる資源も奪い合い、足らない世界になる。それをどう分け合うかみたいなところの根本的なパラダイムシフトが必要ですよねえ・・・
それには競争で成長するだけっていうより何か、抑制された考え方みたいな・・・
去年のロハス10でも講演された「メガトレンド2010」の...
和田: はい。パトリシア・アバディーンさん。
イデ: 彼女の講演も聞いて、「コンシャス・キャピタリズム」、意識の高い資本主義というコンセプトに非常に感銘を受けた。コンシャスという言葉は、ロハスと非常に親和性の高い言葉だと思う。だから、CO2のキャップがはめられ、コントロールされた資本主義になるためには、ビジネスマンもコンシャスにならなきゃいけない。要は、意識レベルを一歩高めないといけないし、消費者もそうかもしれない。バーゲンで沢山買うのが得だ!と思うようなところから、買わない選択とかね、そういう人が増えていかないといけないじゃないですか・・・だから、コンシャス(意識)っていうのは、ある意味いろんなところで必要な概念だと思う!
 自己開発というジャンルがロハスに含まれているのですが、個人がコンシャスになるために、ヨガをやるのも瞑想をするのも、そしてセミナーに出るのも、ロハス的視点で見ると自分のステージを高める活動なのだ、と僕は実感できるんですよね。
和田: 結局、最後は一人ひとりが自己開発をして高めていくしか、人は変わらないし、変えられない。そういった人たちからスイッチが入っていって、広がっていくしかないんですよね・・・
 ロハスの感性とか、モチベーションを高めたりとか、いろいろあると思うんですけど、どうしたらいいと思います?
イデ: 僕は、たまたまビジネスも音楽も自己表現のひとつだと最近気づいたんです。僕はたまたまいろんな事をやっていることが自分らしさなのかなって・・・
 感性っていう言葉は抽象的な言葉なんだけど、結局、きれいなものをきれいと思うとか、それから気持ちいいことを気持ちいいと思うとか、楽しいことを楽しいと思っていることが感性だとすればね、普通に都会に暮らしているとそれって鈍っちゃうところがあるじゃないですか?
和田: ええ。
イデ: 満員電車に乗って毎日会社に行って、何か・・・
和田: 考えている余裕がないというか?
イデ: 余裕がずっと無いと、花を見ても人の話を聞いても「ジーン」とくることがないような・・・
和田: キャッチしないんですね。
イデ: うん。音楽とか演劇とか、いわゆる芸術っていうのはそういうのを呼び起こしてくれるような効果がやっぱりあるし、自分がやることによって思い出すってことも当然あるから、僕にとっては、音楽をやるってことは、バランスの時間だし、僕の音楽を聴いてくれて、そういう気分になってくれる人がいたら、やっぱり音楽をやっている意味があるわけじゃないですか。
 そんなにライブをやる方ではないんだけど、去年、ネットワーク地球村の高木善之さんに呼んでもらって、講演会で初めてロハスについて語りながら、5曲ぐらいギターを弾いて、最後に、ウェブ・オブ・ライフっていう曲をみんなで合唱したりして、何かこう感動的だった。
和田: そういう伝え方いいですよね!
イデ: ええ。それで、何か分かち合ったなあっていう感覚があって・・・
それまでは、セミナーをやる自分と、ギターを弾いている自分は自分の中で分かれていて、あんまりそれを一緒にすることは考えていなかったんだけど、やってみると、それも自分なりの自己表現でもあるのかな、と改めて気づいて、その後マスターマインドセミナーでも同じ様にロハスを伝えて、ギターを弾きました。
 感性っていうのは、自分で音楽を聴いたり本を読んだり美術館に行ったり・・・いいモノに触れないと、中々こう都会に住んでると鈍っちゃうから、できるだけ自然に触れる時間も作った方がいいと思うんですよねえ・・・
和田: 出来るところから、少しでもやるっていうことでしかないんですねえ・・・
イデ: 最近は、子供に教えられることって多いんだけど...例えば、考え事をしていてこっちがいい加減に生返事してしまうと「話、聞いてる?」って子供に言われちゃうわけ(笑)。そこでハッと気がつくことがあったりして・・・ですから、特に子供と向き合っているときは100%子供の方を向くことを心がけています。でないと違うメッセージを送っちゃうじゃないですか。
和田: ええ。そうですね。
イデ: だから仕事はどれだけ忙しくても、子供がまだ小さいときには、特に自分があなたと過ごしている時間は、あなたのために一生懸命時間を使っているんだよって意識して貰わないと、将来ぐれちゃうと思うんですよ。(笑)
だから、僕はそういう風にしようと努力しています・・・
和田: 僕もいまインタビューをやっているようなカタチで向き合うと、かなり子供もよくしゃべると思うんですけど・・・(笑)
すべてがつながって関係し合っている。
ウェッブ・オブ・ライフ(生命の輪)
和田: イデさんの今後のビジョンについてお聞きしたいんですけど。
イデ: 夢とかビジョンを考える上で、最近僕が読んだ本の中でベースになっている本があってね。
それは一冊目に書いた本の最後にも書いて、インスパイアされた曲も作った「ウェブ・オブ・ライフ」という、量子力学のフリフチョフ・カプラ博士が書いた本があるんですよ。
和田: それは、新しい本ですか?
イデ: いや、もうかなり古い。英語版だと10年ぐらい前・・・
彼はタオ心理学っていう本も出していて、量子力学の博士だけど、心理学も環境問題もわかっている人。ウェブ・オブ・ライフっていうのは、「生命の環」という意味で、実はネイティブ・アメリカンの言葉とかにも出てくる言葉なんだ・・・
 食物連鎖ってあるじゃないですか、そのように全てが繋がって関係し合ってるっていうのがウェブ・オブ・ライフなんですね。
和田: へえ。
イデ: その本では、システム思考から入って遺伝、進化とは何かとか、複雑系のこととか、それからディープエコロジーのこととか、非常に幅広い世界をカバーしている本だけど、サイエンスの世界で量子力学の世界に行くと、意識が物質というか波動をコントロールできるっていうことを科学者も信じるようになってきていて...
和田: はい。
イデ: それを科学の世界から説明するページと本来のスピリチュアルな世界の両面から彼は説明して、結局、世界は、全ては繋がっているということを、ロジカルに説明した本です。非常に素晴らしい内容だけど、日本語版がまだ出てないんで、機会があったら訳したいと思っているんだけど...
 そういえば、今度、台湾で僕のロハスの本が出るんだけど・・・
和田: そうですか・・・すごいですね!
イデ: 台湾はジャパンクールですよね。ロハスも普及し始めているようです。韓国では、ウェル・ビーイングという言葉もありますが、ロハスもだいぶ広がり始めてきてるし、上海とか都市部でも似たようなライフスタイルがいいと思う人が増えてる。そうすると、ロハスってアジア発のライフスタイルへの共感の輪ということもいえると思うんですよ。アジアの動きとして世界に伝えられれたらなって・・・。
和田: なるほど・・・
イデ: ヨーロッパでは、オーガニックって言葉がありますが、ロハスはほとんど知られていません。アメリカは先ほどご説明した通り業界用語。・・・でも、アジアではロハスがこれだけ消費者に言葉として広まったことをポジティブに捉えて、何かロハスな意識の高い消費者に支えられたロハスビジネスがどんどん沸きあがるロハス立国ジャパン、ロハス・アジアみたいな。例えば、フォーラムを日本で開催してそこにアジアの人を呼ぶとか・・・
そういう風に発信していったら面白いのかなって・・・
和田: 素晴らしいですね。中国とかね、どうしても環境問題とか、いろんな面でネガティブに捉える人も多いんですけど。やはり生活レベルで変わっていってると思うんですが・・・
イデ: 中国は、特に都心部は金持ちが多くなってきてるじゃないですか。でも、空気が悪い・・・
和田: そうですね。
イデ: やっぱりあそこに住んでいる人が、こんな空気もう嫌だ!ってみんなで言わないと。そういう声が多くて発している人がお金持ちで消費者としても無視できなければ、企業も真剣に考える、そんな風潮になってくるんじゃないかな?
和田: 楽しみですね。ぜひロハスがアジアに広がっていって欲しいですね。
イデ: アニメとかいろんな分野で、ジャパンクールって思われているから、日本発というのはチャンスじゃないかな?日本の生き方としてのロハスでもいいと思うんですよ、最初は。
和田: いやぁ、今日は本当に多岐にわたってお話をお聞きして、多分これを読んでいただく皆さんも感性高めてですね・・・
イデ: そうですね。
和田: ロハスやっていただけるかなと思います。
イデ: ここまでの話って、あんまりするチャンスがないじゃないですか。今日は貴重な機会でした。
和田: 今日は、本当にありがとうございました。
イデトシカズ/プロフィール
1958年1月1日生まれ、山羊座。
20代にプロミュージシャンとしてデビュー。1987年に渡米し音楽製作ソフトを制作、世界的大ヒットとなる。2000年に日本に帰国、音楽・映像制作会社の代表として、"喜多郎"などの癒し系アーティストを手がける。

次女の誕生を機に子育てを中心とした生活に移行し、音楽活動を再開。2005年5月、アコースティック・ユニット「To Be Acoustic (TBA)」のファーストアルバム「Simply Natural 〜Music for LOHAS〜」をリリース。

アメリカ滞在中からLOHASな生活を実践。2003年からアメリカのLOHASコンファレンスにも参加するなどLOHASを日本で広める活動を行なっている。

2005年8月に、「いきいきロハスライフ!〜LOHAS ココロとカラダと地球に優しい生き方〜」(ゴマブックス)を出版。



主なCD

Simply Natural
-Music for LOHAS-

リビングルームをシンプルでナチュラルな空間に変えるCDです。
[全12曲]



主な著書

いきいき
ロハスライフ!
LOHAS
-ココロとカラダと
地球にやさしい
生き方

■著者:イデ トシカズ
いきいき
ロハスライフ!
のすごし方

■著者:イデ トシカズ


■ インタビュー用語集

ガイアム(GAIAM)
ガイアムは、アメリカ・コロラド州のボルダーに1988年に設立されたLOHAS企業。カルチュラル・クリエイティブ層を対象に商品・サービスの販売や情報提供を行う会社です。カタログ、Webサイト、店舗(全国21,000店)でコーナー展開する他、オリジナルショップも展開するマルチチャンネル販売で、年商100億円超。環境に配慮した家庭用品、クリーンエネルギー機器、自己開発関連商品の販売を行い、衣食住約5000アイテムを扱っています。そのうち約6割はオリジナルブランド。LOHASを牽引する代表的な企業です。
(参照:LOHASプロデューサー 大和田順子さんのWebサイト: http://www.owadajunko.com/
【イースクエア】
ピーター・ピーターゼン氏が社長を務めるCSR/環境コンサルティング会社。持続可能な社会に向けて、企業の様々なソリューションを行う。CSR(Corporate Social Responsibility) =企業の社会的責任。
【取材後記】 ロハスなんてあたりまえの世界になるのはいつだろう・・・。
 最近、雑誌やTVなど、メディアでもLOHASという言葉がよく取り上げられるようになった。流通やビジネスの専門誌などでも、ロハスビジネス最前線などと、健康とエコロジーを中心としたサステナビリティに関する価値観が大きなトレンドとして捉えられて、健康、エコをひとまとめにして、手っ取り早く消費されるブームのように取り扱われているような懸念もあるけど、井出さんも語っているように、ロハスの主人公は、誰ならぬ消費者であって、生活者である僕たちなのだ。僕たちの生き方の選択が自然なカタチで健康と持続可能な世界を求めている・・・それがロハスであって、意図的に創られるトレンドではない。映画「不都合な真実」が日本でも話題を呼んでいるように、その原因はともかく、地球温暖化の問題は紛れもない事実であって、このままでは悲観的な未来が待っているという認識は、少しずつ人々の中に理解され始めている。でも、そのことに対して個人レベルで具体的な行動を起こすレベルには、未だ至っていないというのが現状のようだ。それは、自分自身の健康を顧みる事さえも同じ。
 どういうカタチにせよ、ロハスという価値観が広がって、積極的なアクションが生まれてくれば、世界は大きく変わるだろう。世界が変わるからロハスになるのか、ロハスに価値観が広がるから世界が変わるのか。いずれにしても、世界は変わらざるを得ない段階まできている。おしゃれで、クールなライフスタイルの選択がロハスであって、そうした生き方の選択が社会のスタンダードになる。そして、もうロハスなんて声だかに叫ぶ必要がない世界に早くなって欲しいと思う。
 僕も、流されないようにしっかりと自分を見つめて、地球のため、みんなのため、
自分のための選択を心がけていきたい。

記 和田達哉